國學院大學久我山中学高等学校
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学びの泉・学びの杜 〜もっと知りたい國學院~ 第2回

第2回 國學院大學博物館特集

 

國學院大學の学びを紹介する「学びの泉 学びの杜」。今年度は〝もっと知りたい國學院〟をテーマに、その独自性に迫ります。
第二回は学芸員の佐々木理良さんに、「学術性」と「親しみやすさ」の融合を〝らしさ〟とし、積極的かつ柔軟に大学博物館の可能性を広げている、國學院大學博物館のあり方や取り組みについて伺いました。

 

 國學院大學の研究や教育を映し出す
 日本文化の心を粋に発信する

 ――國學院大學博物館はどのような位置付けの施設ですか。

 國學院大學博物館は渋谷キャンパスの学術メディアセンター棟地下1階にあります。学術資産の公開と研究成果の発信、社会還元を目的に、館長、博物館担当教員、事務職員(学芸員を含む)が一つのチームを形成して、企画・運営を行っています。
 当館は研究や教育の拠点として、日本文化や歴史に関わる貴重な資料を豊富に収蔵しています。その資料を活用した研究成果を広く公開するとともに、各種の教育普及事業、連携事業などにも取り組んでいます。
 淵源をたどると、1928年に、当時、学生だった樋口清之博士(1909-97)によって創設された考古学標本室(後の考古学資料室・考古学資料館)が起点です。その後、神道学資料館(1963年設置)と統合され、学術メディアセンターが竣工した2008年に、文化リサーチセンター資料館が開館。2013年の改称で「國學院大學博物館」となりました。
 博物館の展示には常設展と、企画展・特別展(特定のテーマに基づく展示)があります。常設展は「考古」(縄文土器や埴輪などの展示)、「神道」(祭祀や神社に関する展示)、「校史」(本学の歴史や国学にまつわる展示)の3部門で構成されています。
 企画展・特別展は「日本の文化や歴史」を軸に、例年6、7本の展示を実施しています。各展示の内容は、月に1回、博物館の運営全般について話し合う企画検討会の中で決まっていきます。
 どの展示にも教員が紐づいているところが、当館の特色でしょうか。大学による最新の研究成果を積極的に発信しています。

 

 学術資産として価値の高い資料が豊富。
 それは研究の蓄積があることを意味する

 ――國學院大學には、母体である「皇典講究所」(1882年)の創立から143年という長い歴史があります。膨大な研究の蓄積が博物館を運営する上で力になっているのでは?
 

それは間違いありません。収蔵品約10万点のうち、もっとも多い資料は考古学です。館祖である樋口清之博士が、ご自身で採集された考古学の資料を約3000点ほど、在学中に寄贈してくださったものが軸になっています。奈良県のご出身で、中学生の頃から長年拾って集めていたものと聞いています。
 その後も先生方や民間の方からも寄贈の申し出をいただくことがありますが、國學院なら大切な所蔵品を安心して預けられるという信頼をいただいているからだと思います。それは、これまでの研究の歴史に裏打ちされたブランド力とも言えると思います。
 神職の養成機関をもつ大学でもあり、神道に関する資料や研究は日本で中心的な存在といえるでしょう。図書館が所蔵している資料も素晴らしく、当館で多角的な視点でさまざまな展示ができるのは図書館のおかげです。
 価値の高い資料がたくさんあるということは、それだけ研究の蓄積があるということです。大学から研究を取ったら高校の延長になってしまいますから。そうした本学の姿勢を学内外を問わず多くの方に届けることも、私たちの役割の一つです。

 

 多くの方の目に留まることが大事。
 ストーリーで心を揺さぶりたい

 ――企画展や特別展はどのように企画していますか。

 企画の軸は本学の研究に関する分野に基づいています。なるべくいろいろな角度から日本の文化や歴史にアプローチしたいと思っていますので、今年であれば、「浮世絵・祭り」、「アイヌ文化」、「中世日本の神々」というように、バラエティに富んだテーマを構想することを心がけています。
 そうした前提をもとに、毎年、年間のテーマ構成を考えていきます。外に向けて発信している以上、社会の関心がどこに向いているかをキャッチすることも重要です。社会の関心と展示のテーマが結びつくと、多くの方が興味をもってくださるので、その年にしかできない企画は外さないようにしています。
 例えば「生誕・没後何年」「世界遺産登録記念」などの記念行事、あるいはその時、世間の関心が高いトピックや「大河ドラマ」などと重なる研究テーマや資料があれば、優先的に実施が決まります。今年もNHK大河ドラマ「べらぼう」にちなんで、企画展「江戸の本屋さん -板元と庶民文学の隆盛-」を開催し、好評を得ました。
 企画は先生方と一緒に考えていきますが、持ち込みや、こちらからお願いする場合もあります。進め方はいろいろですが、基本的には何を展示したいのかという企画書をベースに、どのような展示になりそうかを想像し、構想を練っていきます。
 当館の展示は、研究成果や、それに伴う学術資産を見てもらうことが目的なので、単になにか資料を見てもらうのではなく、ストーリー(話・展開)を見てもらうことを意識しています。どの企画にも、必ず「序章」「ハイライト」「終章」という流れがあり、一つひとつ確認しながら、「なにを見せたいのか」「どんなふうに見せたい(伝えたい)のか」「どんな人に見せたいのか」ということを明らかにしていきます。そこまで共有できると、チラシのイメージも固まってきます。

 

 「学術性」と「親しみやすさ」の融合で、
 学術性を失うことなく興味を掻き立てる

 ――タイトルやポスターがいつも魅力的で、展示に期待がふくらむのですが、どのような意図をもって作っていますか。

 大学博物館は堅苦しい、入りづらい、退屈しそうなど、ネガティブなイメージをもたれがちです。そうしたイメージを取り払い、誰もが入りやすく、難しそうだけどおもしろそうと思ってもらえるような展示づくりを目指しています。
 その施策として、魅せ方を工夫しています。幅広い年代の方々の心に響くようなものにしたいという思いから、タイトルにしても、チラシにしても、ポスターにしても、大学博物館としての学術的なクオリティを保ちつつも、魅力的に見えるデザインを追求しています。
 例えば、企画展「江戸・東京の祝祭とおしゃれ -飾る都市と人-」では、タイトルを「近現代のまつり」や「描かれた祝祭と祭礼」などにしてもよかったのですが、先生と展示を作っていく中で出てきたのが、「ハレの日」や「祝祭」「おしゃれ」といったキーワードでした。
 浮世絵がご専門の藤澤紫先生(文学部/前号にインタビュー記事を掲載)は、とても言葉選びがお上手なんです。当館が新収蔵した浮世絵コレクションを初公開したときの、企画展のタイトルも秀逸でした。「浮世絵ガールズ・コレクション ―江戸の美少女・明治のおきゃん― 」です。「おきゃん」って、なかなか出てこないですよね。感心しきりでした。
 尚かつ、この展示でなにを得られるのか、ということがわかりやすいチラシ作りも心がけています。先生方にも、展示を広く多くの方に見ていただきたいという思いがあるので、研究をキャッチーに見せていくことについては賛同していただいています。
 表現は落としどころが難しいのですが、学術的な質をキープしつつも、幅広く親しんでもらうことが当館らしさである、という認識をチーム内で共有できているので、軸がブレることなく、魅力的なものを作ることができています。

 ――年6、7回、展示を開催するとなると、常に複数のことが動いているという感じですか。

 開催中の展示を運営しながら、同時進行で次の展示の準備を進めています。例えば、今(取材時)、開催中の特別展「アイヌモシㇼ -アイヌの世界と多様な文化-」(国立アイヌ民族博物館共催)が始まる頃には、次の企画展「中世日本の神々 -物語・姿・秘説-」のチラシが完成に近づき、図録づくりが始まっています。忙しいのですが、展示全体の監修は先生が担当してくださいます。展示の紹介文なども執筆してくださるので、大変ありがたいです。

 

 オンラインミュージアムを開設。
 大学博物館の可能性をさらに広げたい


 ――人気のあった展示を教えていただけますか。

 特に反響をいただいた展示の一つは特別展「神に捧げた刀―神と刀の二千年―」(2019年)です。神社の奉納刀に焦点を当てた展示でしたが、「刀剣ブーム」と重なって、驚くほど多くの方が来館してくださいました。
 もう一つは、天皇陛下の御即位と同時期に開催した企画展「大嘗祭」(2019年)です。こちらも会期を延長するほど多くの注目を集めました。また、各局が報道する中で、館長をはじめ、本学の先生方が多数の番組に出演し、解説を行いました。
 意外にも若い女性に人気で驚いたのが、春の特別列品「土御門家がみた宇宙-江戸時代の天文観測」と企画展「祓 -儀礼と思想-」(2023年)です。土御門家は平安中期の陰陽師・安倍晴明を受け継ぐ支流の一つで、代々、陰陽家として、主に天文道をもって朝廷に仕えた公家なのです。当時流行していたマンガやゲームの影響か、想定とは違う客層の方が足を運んでくださったようです。

 ――興味深い展示を行えるのは、学内外にネットワークがあることも大きいですか。

 そう思います。企画展「江戸・東京の祝祭とおしゃれ -飾る都市と人 -」では、神田神社さんの後援で協力をいただきました。アイヌ文化の展示では、國學院大學北海道短期大学部に、アイヌ語研究の第一人者として世界的に著名な金田一京助博士の記念文庫があります。加えて、近年アイヌの民族資料を新収蔵したこともあり、「プンカラ」という、アイヌ文化を扱う施設同士のネットワークに入らせていただいています。
 また、当館を目当てに足を運んでいただくよりも、渋谷キャンパス周辺が文化エリアとして広まってほしいと思っているので、地域連携を大事にしています。

 ――次の企画展「中世日本の神々 -物語・姿・秘説-」(開催中/〜11月30日)も興味深い企画ですよね。

 本学が所蔵する資料から、様々な思想・信仰・宗教と関わり合いながら変貌していく神々の様子を見ていきます。古典籍や絵図、鏡など、様々な姿で表象される神様や仏様に出会えると思います。

 ――これだけの展示を無料で公開しているということに驚きます。

 社会に開かれた大学の窓口として、学術情報を積極的に社会に向けて発信、還元していくという姿勢の表れです。
 國學院大學附属幼稚園の皆さんも、毎年来てくださいます。「園児が大学博物館!?」と驚かれるかもしれませんが、幼稚園の先生と一緒にオリジナルの「探検ノート」を作って、館内を探検してもらっています。約1時間ほどのツアーですが、飽きずに楽しんでくれています。
 一般の方々に「おもしろそう!」と思ってもらえる展示づくりができる環境なので、今後も活動の幅を広げていきたいです。

 ――オンラインミュージアムも運営しているんですよね。

 常設展や、企画展・特別展の解説動画を配信しています。初公開時のチャンネル登録者数はわずか26人でしたが、現在は11,200人(編集時/2025年10月)です。Xのフォロワーはまもなく2万人になります。これからもSNSやオンラインミュージアムも活用しながら、大学博物館の可能性を広げていきたいと思っています。久我山生の皆さんも、気になる展示を見つけたら、ぜひお気軽にご来館ください。

【取材日/令和7年7月24日】